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東京高等裁判所 昭和52年(ツ)50号 判決 1979年2月06日

上告人

株式会社まさご

右代表者

中山クニ

右訴訟代理人

外池泰治

仲田晋

被上告人

中村信雄

右訴訟代理人

貝塚次郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人外池泰治、同仲田晋の上告理由第一点について

民訴法一八七条三項の証人の再尋問に関する規定は、訴訟における直接主義を徹底するために設けられた規定であることはいう迄もないが、その趣旨とするところは単独の裁判官又は合議体の裁判官の過半数が更迭する前に尋問された証人の証言の態度等は文書である証人尋問調書の記載から知り得ず、裁判所はこれに基く心証をとり難いので再尋問により右更迭後の裁判官に直接その心証を得さしめようとするものである。従つて右再尋問によつて立証されるべき事項は、裁判官更迭前になされた証人尋問の内容と同一のものでなければならず、しかもそれが当事者間に争がある事項であつて、しかも他の証拠と矛盾する事項でなければ再尋問をなす必要のないものと解するを相当とする。

ところで所論の電柱の不存在については、原審証人安西源喜はその第三回の尋問において、昭和四〇年七月当時右電柱は存在しなかつた旨供述しているが、この点については他にこれに反する証拠はない。(原審における被上告人本人の第二回尋問における、以前右電柱は存在したが、昭和四〇年一月頃撤去された旨は、右安西証人の証言と矛盾せず、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第一七号証の一、二も右被上告人の供述と対比すれば、前記安西証人の証言と矛盾するものとはいえない。)

従つて原審が前記安西証人の証人尋問の申請を却下したことについて何らの違法は認められない。<以下、省略>

(吉岡進 前田亦夫 手代木進)

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